FinTech news

FinTech、とくに資産運用系のスタートアップサービスを中心に紹介します。

投資家の企業ミーティングをアレンジする英Ingage

少し変わり種のイギリスのFinTech企業、Ingageをご紹介します。

www.ingage.com

Ingageは機関投資家ファンドマネージャー・アナリストが投資先(候補含む)企業を訪問する際のアレンジメントを行うプラットフォームを運営しています。

従来、機関投資家の企業訪問のアレンジメントは投資銀行・証券会社が担ってきました。こういったサービスは、証券会社が作成する企業調査レポートなどと共に機関投資家に「タダで」提供されます。この見返りとして、機関投資家は証券会社に株式などの売買注文を発注し、実質的に追加サービスのコストは売買手数料に上乗せされています。これがいわゆる「ソフトダラー」です。

(参考→ 一般社団法人戦略的グローバルIR協会 海外投資家による直接コンタクトの増加とソフトダラー問題

ソフトダラーは広く行われている慣行で違法なものではありませんが、最終的にこのコストを払っているのは機関投資家ファンドに投資している顧客であり、どのサービスにいくらコストがかかっているか不明瞭なため利益相反が生じやすいと言われています。米英の規制当局はこれを問題視しており、今後規制が強まるものと思われます。

Ingageは証券会社に代わって、テクノロジーを用いて透明性を確保する形で企業訪問のアレンジメントを行います。2014年1月のサービス開始時から大手運用会社のFidelityが利用しているほか、大手運用会社のSchrodersも顧客に加わりました。

テクノロジーを用いた新しいサービスモデルで、大手金融機関に寡占されていて不透明なサービスを、クライアントである機関投資家、さらには最終投資家である一般投資家にもメリットある形で提供するスタートアップと言えます。

日本においても機関投資家の企業訪問は証券会社がアレンジすることが多く、そのコストはソフトダラーという不透明な形でファンドに投資している一般投資家が負担しています。日本でもIngageと同様のサービスが出てくるか注目したいと思います。