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FinTech、とくに資産運用系のスタートアップサービスを中心に紹介します。

米ロボ・アドバイザーのトップランナー、Wealthfrontのサービスを解説

米国におけるロボ・アドバイザーのトップランナーであるWealthfront。そのサービスを詳しく見ていきたいと思います。

Wealthfrontのウェブサイトはこちら。

Investment Management, Online Financial Advisor | Wealthfront

Wealthfrontは2011年12月の創業、約4年で預かり資産が$3bn弱(30億ドル、1ドル=120円として約3600億円)。ロボ・アドバイザースタートアップの中ではBettermentと並んでトップを走っています。

運用報酬

最初の1万ドル(約120万円)までは無料、それ以上は一律0.25%という極めてシンプルなシステム。また友達紹介キャンペーンがあり、一人紹介するごとに5000ドルが追加で無料になる仕組みもあります。

運用手法

運用チームの顔ぶれを見ると、「ウォール街のランダム・ウォーカー」著者のバートン・マルキールがCIO(Chief Investment Officer)、「敗者のゲーム」著者のチャールズ・エリスがAdvisorとして名を連ねています。実際にどれほど貢献しているのかはわかりませんが、長期インデックス投資界における押しも押されもせぬ巨匠のこの2人を擁しているのは同社の強みと言えるでしょう。

Welthfrontの投資手法はホワイトペーパーとして、ウェブで公開されています。

Wealthfront Investment Methodology White Paper | Wealthfront Whitepapers

口座開設の際に、ユーザーは年齢・収入・リスク選好度などに関する簡単なアンケートに回答します。これによりユーザーのリスク許容度をランク付けします。

ポートフォリオのリスクレベルは1~10に分けられ、各リスクレベルの資産配分比率は下の図のように定めています。リスクレベルが大きくなるほど、新興国株式や米国株式などリスク資産のウェイトが大きくなります。シンプルで透明性が高く、好感が持てる仕組みです。

https://research.wealthfront.com/wp-content/uploads/sites/3/2014/12/im_chart3.jpg

この資産配分比率に従って、低コストのETFポートフォリオを構築します。マーケットの動きや売買行動などで資産配分が変動した場合には自動的にリバランスを実施します。

IRA, 401kなど税制優遇のある口座と一般口座向け、両方にサービスを提供しています。

以上がコアとなるインデックスETFポートフォリオ構築&リバランスのサービスですが、その他にも以下ようなサービスを提供しています。

Tax-Loss Harvesting

一般口座において、含み損が出ているポジションで損失確定の売りを出すことにより、税額を圧縮することができます。米国株式市場では例年12月にはこれに伴う売り注文が多くなる(タックス・ロス・セリング)ことで有名です。

Wealthfrontでは、年末だけでなく年を通して毎日自動的にこれを実施し、より多くの節税効果を享受できるとしています。このための運用手法(どの程度の損失レベルで売るか、短期売買規制に引っかからないように売った後別のETFを買い戻す、など)を開発しています。そして、リターン追加効果が年間1.55%得られるとしています。

Tax-Optimized Direct Investing

前述のTax-Loss Harvestingをさらに進化させたサービス。通常WealthfrontのポートフォリオはインデックスETFで構成されていますが、この米株部分を S&P500の500社の個別株式で保有することにより、個別株の値動きによるTax-Loss Harvestingを享受するというものです。Tax-Loss Harvestingと組み合わせると2.03%のリターン効果が得られるとしています。

Tax-Loss HarvestingとTax-Optimized Direct Investingは10万ドル(約1200万円)以上の預かり資産の顧客は無料で利用できます。

Single-stock Diversification Service

特定の1社の株式に資産が偏っている投資家向けに、その株式を時間分散で少しずつ売ってくれるサービスです。現在このサービスはTwitterFacebookの社員・元社員向けだけに提供しているそうです。ストックオプション長者が数多くいるシリコンバレーの会社ならではのサービスですね。

 

おわりに

ETFによる国際分散投資は、ロボ・アドバイザーのアーリーアダプター層となるであろう若年富裕層であれば、自前でやってもそんなに手間やコストのかかるものではありません。Wealthfrontの0.25%のフィーは十分に安いですが、コアとなるETFポートフォリオ投資サービスだけではなかなかマス層に価値を感じてもらうのは難しいかもしれません。ですがTax-Loss Harvestingなどのより手間のかかる運用を自動化できるとなれば、手数料を支払ってもサービスを受けたいという投資家は多いのではないでしょうか。

また投資手法を公開して透明性を確保していること、徹底的に使いやすいユーザーインターフェースにこだわっている点が、資産残高を順調に伸ばしている背景にあるのではないかと思います。