FinTech news

FinTech、とくに資産運用系のスタートアップサービスを中心に紹介します。

銀行によるデータ開示と、銀行業の未来についての記事 (The Economist)

The Economistが、銀行による口座情報の提供についての記事を載せていました。Fintechにも関連が深いので紹介します。

www.economist.com

銀行の口座情報、つまり残高データや取引データは宝の山です。定期的に給料が振り込まれる人は安定した職業についているでしょうし、ゴルフ場でよくお金を使う人はおそらくゴルフが趣味でしょう。銀行はこれまでこうしたデータを独占してきたため、例えばローン会社などの貸出業務でライバルとなる他社に対して優位性を持っていました。

ところが近年、インターネットバンキングの普及、そしてFintechサービスの増加によってこの銀行の優位性が崩れつつあります。Fintechサービスは口座情報を手に入れることにより、銀行が提供できるよりもより有利な商品を顧客に提供することができ、それは顧客にとってもプラスになります。

もちろん銀行としては、宝の山のデータを簡単にシェアしたくはありません。そこでFintech側は「スクレイピング」、つまりユーザからオンラインバンキングのIDとパスワードを預かり、(銀行側に無断で)自動的にデータを取ってくることによってデータを入手しています。これは法的にグレーなエリアで、英米の当局はセキュリティを理由に難色を示しているとのことです。

金融当局はスクレイピングではなく、顧客の同意のもとに正式にデータをダウンロードすることについては前向きで、EUでは銀行に対し、顧客の同意のもとに第三者Fintechサービスへのデータ提供を義務付ける仕組みが始まったそうです。

記事では、このデータ提供によって、顧客が銀行を電気やガスのようなインフラとしてだけ使い、実際の取引は使いやすく有利なFintechサービスを使うようになっていくだろうとしています。顧客が銀行の支店に行かなくなったのと同様に、いずれ銀行のオンラインバンキングも使わなくなるだろう、という未来です。

確かにこの方向に進んでいくでしょうし、それは顧客にとってメリットのある未来でもあると思います。

日経新聞フィンテック特集

当ブログのテーマである、資産運用系Fintechサービスについて日経新聞が立て続けに記事を出しています。かなり注目していますね。

こちらの記事(電子版)は記者さんによる、エイト証券のロボ・アドバイザーサービスの体験記。

www.nikkei.com

こちらの記事(本紙1面)ではお金のデザイン、ウェルスナビのほか、米Charles Schwab、SigFigが紹介されています。SigFigについては別記事で紹介したいと思います。

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO93340620Y5A021C1MM8000

 

 

ロボ・アドバイザー「ウェルスナビ」が資金調達

ロボ・アドバイザーのウェルスナビが資金調達というニュースが出てきました。

japan.cnet.com

ウェルスナビについては 以前の記事(↓)でもご紹介しましたが、「お金のデザイン」と同様、ETFによるポートフォリオ構築をアドバイスしてくれるサービスです。

fintech.hatenablog.jp

運用報酬は1%。米国では0.25%が水準になりつつあるなかでは高い印象があり、近い将来手数料競争が発生すると思われます。かつ、資産を100億円集めても売上1億円なので、単体でブレイクイーブンに載せるのはなかなか難しいのではないかと思います。

それでも、大手証券会社の提供するラップ口座に比べれば低コストなETFによる国際分散投資は個人の資産形成の王道だと思いますので、それを提供する同社には期待したいところです。

画像認識ベンチャーがAI(深層学習)を用いたトレーディングのためのサービスを提供

Techcrunchの記事。Deep Learningを用いた画像認識サービスLabellioをローンチしたばかりのスタートアップAlpacaDBが、同じくAIを用いたトレーディングプラットフォームを提供開始するそうです。

jp.techcrunch.com

どのようにAIを使うか詳しくは記事にありませんが、先物やFXのチャートをインプットとして入力し、「こういうチャートの形になった時は買う/売る」というパターンをニューラルネットワークに学習させ、売り買いのシグナルを自動生成するシステムのようです。競合するサービスとして、当ブログでも過去に紹介したQuantopianが挙げられていました。

fintech.hatenablog.jp

 

今回の記事には、画像認識サービスLabellioが「用途がよく分からない」と不発に終わりピボットを決めた経緯が書かれています。今回のプロダクトも、AIのテクノロジーを使いやすくユーザに提供するという意義はあるものの、使う側のハードルが高い(そもそも学習させるルール=チャートで勝てるルールを持っていなければ、勝てるシステムにはならない)ので、なかなか広く使われるサービスとなるのは難しいのではないでしょうか。

経産省がフィンテック研究会

最近「フィンテック」という単語が大好きな日経新聞。今朝の朝刊には「経産省フィンテック研究会 本気の育成か、権益争いか」という記事が載っていました。

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO92551480X01C15A0PP8000

(有料会員のみ)

経産省が新たに開始したのは「産業・金融・IT融合に関する研究会」というそうです。Fintechの官庁としては金融庁の方が先週のFintech協会設立セレモニーでご挨拶しておられ、金融庁主導と考えられますが、経産省も取り残されまいと動いているのでしょうか。 

いずれにせよ最近のFintechは、スーツ組というかグレイヘアーというか、大手金融機関、伝統的IT企業、中央省庁などからの関心が高まり、各社遅れまじと躍起になっているようです。そして肝心の、主役となるべきFintechスタートアップは盛り上がっているのかなあ?という疑問も感じます。

イノベーションを起こすのはフットワークの軽いスタートアップだと思うので、リスクを取ってチャレンジするスタートアップの層に厚みが出てくるといいですね。

「Fintech協会」設立 - 第6回Fintech Meetupで発表

9/30にFintech Meetup 第6回が開催され、その場で「一般社団法人Fintech協会」の設立が発表されました。

fintech.doorkeeper.jp

Fintech Meetupは1年前に30人程度の参加者でスタートしたそうですが、第6回となる今回は募集開始1日で120名の定員が埋まり、キャンセル待ちも50名以上となったそうです。急速な関心の高まりが伺えます。

日経新聞でも「フィンテック」の単語が毎日のように登場していますが、今回の協会設立のニュースも配信されていました。

www.nikkei.com

Fintech Meetup第6回では、日本IBMから「Fintechエコシステム×APIエコノミー」と題してプレゼンテーションがあり、スウェーデンノルウェーIBMと金融機関が共同で開催したハッカソンイベントが紹介されていました。日本でも同様のイベントを計画しており、Fintechベンチャーと金融機関の協業をIBMAPIインフラでサポートしていくそうです。

Bloombergに対抗するメッセージングサービスSymphony

Bloombergに対抗することを目指して開発されたメッセージングプラットフォームSympthonyが、9/15からサービスを開始しました。

symphony.com

Quartzによる紹介記事はこちら。

qz.com

証券会社、資産運用会社、ヘッジファンドの間ではデファクト・スタンダードになっているBloomberg端末。独特のコマンド、特殊なキーボード、高額のライセンス料(年間21,000ドル)などで常に不満の声がありますが、いまだにその地位を脅かすプレイヤーは現れていません。しかし、メディアでもあるBloombergのジャーナリストが端末利用者の行動を盗み見ていたことが明らかになり、金融機関の間ではBloombergへの依存を問題視する声が強まっています。この中、Goldman Sachsをはじめとする大手金融機関がコンソーシアムを結成し、オープンな技術を利用して独立性のあるメッセージングプラットフォームを作ろう、として始まったサービスがSymphonyです。

Bloombergはもちろんリアルタイムのマーケット情報、企業情報、ニュース配信のプラットフォームですが、ある調査によると多くのユーザーの主な利用目的はチャット機能だそうです。Symphonyの利用料は1ユーザー月間15ドル。規制により金融機関の収益率が低下する中、Bloomberg端末をリプレースできるメリットは大きいでしょう。

Symphonyは金融機関向けでなく、個人向けのメッセージングサービスもリリースしています。こちらは無料のサービスとなっています。